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原料米の玉栄は山田錦や五百万石とくらべ味の濃い酒ができます。新酒よりも熟成してから味わいに深みが出て本領を発揮する米です。室温で夏を越して熟成させました。4月の時点ではまだ若めの印象です。

 玉栄は山田錦などと比べると溶けにくい米質で粕は38%ほど出て、日本酒度は+10まで切れました。酸はモロミで2.3程度と高めでした。協会701号ですが、モロミ前半は泡が高く、野生酵母の混入があったかもしれません。しかし酒はヨーグルト的なクセはなく日本酒度のわりには甘味を感じます。玉栄特有の味の濃さがあります。 2018年開催の「全国燗酒コンテスト」で金賞を受賞しました。詳しくは下記アドレスをクリックください。

酒造年度2021BY (720ml 2022BY)
日本酒度+10 (720ml +13)
酸度1.4 (720ml 1.6)
アルコール分15.8%
原料米滋賀県産玉栄100%
精米歩合65% (720ml 酒母米のみ70%,他は65%)
使用酵母きょうかい701号

≪全国燗酒コンテスト2018 金賞≫

最近、様々な日本酒コンテストが内外で開催されています。今年はその内の一つ「全国燗酒コンテスト」に初めて数点出品してみました。

「全国燗酒コンテスト」は今年で10年目をむかえるコンテストです。全国燗酒コンテスト実行委員会主催で「日本酒造組合中央会」が後援しています。国税局技官のOBを「審査リーダー」として業界人、日本酒ファンなど一般の人を含め38名で審査にあたったとの事です。

 今年は251社から838点が「お値打ち燗酒部門」「プレミアム燗酒部門」その他”にごり” ”古酒”などの特殊部門へ出品されました。その内上位の約30%が入賞(「金賞」)に選ばれ、特に上位5%が「特別金賞」になっています。

杉錦は「山廃純米 玉栄」(2016BY)と「生酛 純米吟醸」(2016BY)が「プレミアム燗酒部門」の金賞を受賞しました。

 お燗は最も日本酒らしい飲み方なので、お燗でおいしいお酒を選ぶコンテストというのは大変意義があると思います。しかし実際に実施しようとすると冷酒でおこなうのにくらべ大変な手間がかかります。またお燗でおいしいお酒を選ぶというのは審査員にとっても難しい審査という面があると思います。

 名古屋国税局主催の秋の清酒鑑評会では市販の「純米酒」「本醸造酒」を50℃で審査して入賞酒を選ぶ事を何年も前からやっています。私も審査員を何回かやらせて頂きましたが、実際の燗酒の審査は審査員が経験に基ずいた明確な審査基準も持っていないと難しいと思いました。

 出品用の「吟醸酒」を審査する鑑評会ですと、出品される酒は「吟醸造り」という範ちゅうに収まっていて、甘口、辛口、カプロン酸エチルの好き、嫌いなど審査員の好みは分かれても、醸造技術の観点から問題点を見つけ出し、製造技術の良し悪しを判断する共通の基準に沿った審査ができると思います。

 これが市販「純米酒」の審査となると、現代では多くの審査員は”吟醸酒”としての審査基準に照らして審査する事になるかと思いますが、生酛・山廃のようなクセがあるが味のある酒や、熟成している酒をどう見るかは好みの部分が多くなり、優劣の判断になじまない面が多くなってくると思います。

 しかもさまざまな純米酒を燗にすると「冷酒」の審査では高評価を得やすい”一回火入れ”の若い酒の多くに”生ひね香”といわれる特徴的な香りが立っている事が多く、この香りをどう評価するか迷う事になります。同じく「冷酒」の審査では高評化を得やすいカプロン酸エチルの香りについても”好み”で評価が分かれると思います。

 元国税局醸造試験所長 西ヶ谷尚道先生の解説によると「経験的に20℃前後の室温で利き酒したときの酒質が「酸味」が利いていて「辛口」で「重厚」なタイプの酒は「燗あがり」する酒であるといわれる。室温で「酸味」が強く、かつ「甘味」の弱い(辛口)の酒の温度を上げると、「酸味」の強さは変化せず、「甘味」は強まり、かつ「苦味」や「塩辛味」などが弱まる結果、「甘辛のバランス」がとれ「軽い」タイプに変化する。すなわち「燗あがり」する。「燗あがり」する酒の例としては、純米酒、旨口酒、熟成酒などがあげられる。逆に「燗下がり」する酒とは、「酸味」が弱く「甘口」で「淡麗」なタイプの酒であり、「燗あがり」と逆の変化により「甘辛バランス」が「甘いほうにくずれるため「乏酸」で味の「張り」がないタイプの酒に変化する。すなわち「燗下がり」する。「燗下がり」する酒の例としては、吟醸酒、生酒、低アルコール酒などがあげられる。」とあります。

 今回金賞を受賞した「玉栄」と「生酛純米吟醸」は上記の定義の「燗あがり」する酒にあたると思います。

「玉栄」に5点法の審査(最高1点、最低5点)で1点をつけて頂いた審査員からは「やさいい口あたり。ひろがる味わい。バランス良し。後味のキレも良し。」とのコメントを頂きました。その他「味濃醇。旨味あり良。味のまとまり良」「燻製的な香りを個性として捉える。味わいにも個性がみられる。単体よりも鴨の燻製などの料理と活きそう。」などのコメントでした。

 一方 KURA MASTER でトップ5に入賞した「天保十三年」は入賞を逃しました。こちらは5点法で審査して5人の審査員のうち3人からは2点を頂きましたが、2人からは4点、5点と悪い点を頂き評価が分かれました。ご存じの方はわかると思いますが、「天保十三年」は酸度2.6と現代の酒としては非常識な高い酸度があり、低精米からくる雑味、良く言えば複雑で深い味わい、悪く言うと山廃的なクセ、老ね がありますので現代のきれいな酒に親しんでいる審査員の中には受け入れられない方がいると思います。

 「天保十三年」の味わいはもちろん無難に一般受けをねらったものではなく、現代の日本酒の常識を意図的にはずした味わいです。2点をつけてくださった3人の審査委員からは「キレがいい。気持ちがおだやかになる。」「味まるくなめらか。香りに熟成の特徴がよく出ている。」「米の甘味・旨味がある中で最後はスッキリ辛口」とこの酒のおいしいところを捉えたコメントを頂きました。

 そろそろ夕方の空気がひんやりする季節になってきました。ぜひ燗酒をお試しください。

 

杉錦 玉栄(たまさかえ)山廃純米酒 2021BY 1800ml

¥3,300価格
消費税込み
  • 1800ml 税込み価格です

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