吟醸酒を造るには純粋培養により吟醸酵母の純度を高める事と、酒質にクセを着けないようにする目的から「速醸酒母」を使うのが有利で一般的です。
一方「生酛」には速醸酒母の酒にはない味の幅、深みがあり秋あがりするという長所があります。また「生酛」は日本酒つくりの原点、本流であるという思想もあります。そうした事から現代の造り手として生酛による吟醸造りに挑戦してみたいと思い「生酛純米大吟醸」を造っています。
日本酒度はある程度高くして酸味もある辛口の酒にしています。香りの高さでは速醸の吟醸酒にはかなわないのですが、吟醸酒的な香味をもち食中酒としてのみ飽きしない酒質を目指して造っています。
酒造年度 | 2020BY (720ml 2021BY) |
---|---|
日本酒度 | +6 (720ml +3) |
酸度 | 1.5 (720ml 1.3) |
アルコール分 | 15.5% |
原料米 | 国産山田錦100% |
精米歩合 | 麹米40% 掛米50% |
使用酵母 | 静岡HD−1 (720ml きょうかい701号) |
日本酒の醸造では酵母菌を大量に増殖させると共に有害な雑菌の繁殖は抑える必要があります。そのために仕込みに使う原料の約一割弱の量の蒸米・米麹・水をまず小さなタンクに仕込み、ここに酵母菌を植え付けて増殖させ酵母と乳酸を高濃度に含んだスターターを造ります。これを大きなタンクに移して追加の蒸米、麹、水を三段に分けて加えて本醗酵を始めます。この本醗酵を始める前の工程を「酛」あるいは「酒母」といいます。
生酛(きもと)
乳酸が入手できなかった明治時代以前に行われていた酛の方法が「生酛」「菩提酛」です。酛に加える乳酸が無かった時代は、速醸酛より低温に仕込んで雑菌の繁殖を抑えながら自然に乳酸菌が繁殖して乳酸を生産して酸っぱくなるように誘導していました。乳酸菌は自然界に広く生育していて酵母のように糖分に富む環境でよく増殖します。繁殖した乳酸菌は酒母工程の後半に酵母菌が増殖してくると酵母の造るアルコールと自らの造った乳酸によって死滅してしまいます。こうして酵母菌と乳酸を高濃度含んだ酛ができあがります。明治時代初期までは日本酒の酛は全て「生酛」あるいは「菩提酛」で造られていました。
杉錦 生酛純米大吟醸 2020BY 1800ml
1800ml 税込み価格です